
「真の意味での感情は、英語で話さないと伝わらない」
そうおっしゃるのは、X Corp. Japan 株式会社 代表取締役の松山歩氏。
「先輩と同じことはしたくない」という負けず嫌いな性分を原動力に、ネット広告の黎明期から業界の変革を牽引してきた松山氏。
AIによる自動翻訳が劇的に進化するその渦中にいらっしゃる松山氏が今、あえて英語学習をする理由とは──。
松山 歩 氏
X Corp. Japan株式会社の代表取締役 兼 日本及びアジア太平洋地域統括として、日本およびアジア太平洋地域の広告事業を統括。1999年東京大学工学部卒。1999年から2005年までは読売広告社にて営業を担当し、インターネット広告の提案活動を推進。2006年から2014年までは、日本マイクロソフトにて、広告事業部門の部長として主に広告会社様担当組織をリード。2014年にTwitter Japan入社後は広告主担当部門の部長として主に、消費財、通信業界等を担当。2019年からは執行役員、広告事業本部長として、国内大手広告主様担当部門をリードし、顧客中心主義の組織構築、業務運用体制の構築に従事。
PROGRIT PRIMEは、プログリット代表の岡田が、世界で活躍する日本のビジネスリーダーの皆様に、「なぜ今、英語を学ぶのか」、その背景や想いを伺う番組です。今回のゲストは、松山歩氏。独自のキャリア選択や、X社のグローバル戦略のお話、AI時代における英語学習の意義まで熱量高くお話くださっています。本記事では、対談の一部を抜粋しお届けしています。
目次
「建築学科からメディアビジネスへ。『先輩と同じことはしたくない』」

岡田祥吾(プログリット代表取締役):松山さんは非常に独自のキャリアを歩まれていますよね。
大学では建築学科で学ばれていたとのことですが、そこから新卒で広告業界を選ばれたのは、どういった背景があったのでしょうか?
松山氏:まあ私、非常にダメな学生でございまして(笑)。就職活動もあまり身が入っていなかったんですね。「サラリーマンにはなりたくないな」なんて生意気な野心を抱きながら活動していました。
ただ、建築学科で学んでいた中で、人々のライフスタイルや生活に何か提案をしたり、変化を及ぼすような仕事に就きたいという根本的な思いはありました。
建築はその一つの形ですが、メディアというのも非常に面白いと思ったんですね。
アカデミズムに進む感じでもないなと考えていたので、じゃあメディアビジネスに取り組んでみようかな、というくらいの気持ちで広告会社を選んだのが当時の状況でした。
岡田:入社後は、まさにインターネット広告の黎明期を支えられたと伺っています。
松山氏:1999年に入社したのですが、とにかく負けず嫌いなところがありまして。
「先輩とは絶対同じことはしたくない」と入社したその日から思っていたんです。
先輩がやっていないことで自分ができることを探し出したら、当時はまだネット広告のマーケットが小さく、手がけている人数自体も少なかった。
ここはチャンスがあると思って同期の技術に詳しい人間や外部パートナーさんと組んで新しいソリューションを作り、1年目で売り始めたら、ものすごく売れたんですね。「これは面白いな」と確信して、そこからはネット広告に集中していきました。まさに時代が動く瞬間を肌で感じられた社会人の初期でしたね。

「『地震のとき、全員がスマホを見ていた』──身近な変化にこそ確信がある」
岡田:2006年にマイクロソフトへ、そして2014年に現在のX(当時のTwitter)へと移られます。当時、何が決め手となったのでしょうか。
松山氏:当時はスマートフォンとソーシャルメディアのブームが同時に来ていた時期でした。
私は、ライフスタイルをデザインする仕事に興味があると申し上げましたが、情報の生産や消費のスタイルが一気に変わるな、ということを2012年頃からひしひしと感じていたんです。
そんな中、ある時オフィスで地震があったんですね。
岡田:地震の際のオフィス、どういった光景だったのですか?
松山氏:周りの人が何で情報を調べているか見たら、みんなTwitterで調べていた。
その様子を見て「今、一番早く人が見に行くのはTwitterなんだ」と。
人々の情報収集の方法自体が大きく変わると確信を持ち、この会社に行こうと決めました。
岡田:そういった社会の変化に対する「感度」はどうやって磨かれているのでしょうか。
松山氏:友人や家族など、身近な人が本当にどう変わっていくのかをすごく見ています。
想像の世界ではなく、実際の利用者の行動の変化を見て、そこにちゃんと理由があると思えたら確信になります。
そこには大きな利便性の進化という裏付けがあるはずですから。
身近な人の行動の変化こそ、私が最も信頼している指標ですね。
「Xの自動翻訳が、日本のコンテンツを世界へ解き放つ」

岡田:最近、Xの自動翻訳が世界対応していくという大きなニュースがありました。これによって、プラットフォームとしてどのような姿を目指しているのでしょうか。
松山氏:Xは世界中の人々が自由に参加して意見やアイデアを交換する「グローバルタウンスクエア(世界の広場)」を目指していますが、これまで言語の壁は一つの障壁でした。
日本のXは世界でも有数のアクティブな国ですし、コンテンツの質も非常に高い。
日本独自のクリエイティブな投稿は、絶対海外の人も気に入るはずだという確信が社内にありました。
岡田:実際に翻訳機能が導入され、どのような変化が起きていますか?
松山氏:Grokの翻訳機能が進化したことで、今では英語と日本語でシームレスな会話が成立しています。日本のユーザーが日本語で投稿した内容が、アメリカのユーザーには英語で流れる。それに英語で返信すると、日本のユーザーには日本語で出てくる。
真の意味で壁のないグローバルな広場が生まれたのは、一人の社員としてこの上ないやりがいですし、日本の優れた技術や伝統、文化が世界中に知っていただける機会が増えていくことに、ものすごく期待しています。
「センター満点でも『Pardon?』がわからなかった。受験英語の限界」

岡田:松山さん自身の英語学習に関してもお聞かせください。
もともと受験英語などは非常に得意な方だったそうですね。
松山氏:実は大学受験では英語がすごく得意で、当時のセンター試験も200点満点だったんです。だけど「全く話せない」。
大学の同級生で、田舎の公立高校から来た私と似たような境遇の友達がいたのですが、二人で英語の授業に出たとき、テキストに出てきた「Pardon?」という単語の意味が二人とも分からなかったんですよ。
岡田:満点なのに「Pardon?」がわからなかったんですか?
松山氏:受験勉強は長文読解や難しい英作文ばかりで、いわゆる口語をほとんどやらないので、見たことがなかったんです。「このパードンってどういう意味?」って友達に聞いたら、聞かれた方も「パードン(えっ?)」っていう感じで(笑)。
そのくらい学習が偏っていた。外資系企業に入ってからも、面白い企画を自分で本社の人に伝えられないストレスがずっとありました。実践的な英語を学べると周りからも話で聞いていたので、プログリットを受講し始めました。
「言語外の要素こそが大事。真の意味でのコミュニケーション」

岡田:AIで言葉の壁がなくなる中で、それでも人が英語を学ぶ必要性をどう考えていますか。
松山氏:もちろんAIで作業は楽になりますし、コミュニケーションのハードルは下がっていますが、私は「対面のコミュニケーション」の重要性はなくならないと思っています。
本当の意味での心の触れ合いは、表情やトーン、その「間(ま)」で伝わることがものすごく多い。言語外の要素こそが大事なんです。日本語と英語を介した翻訳機越しでは、その「間」は成立しない。真の意味での感情を英語話者に伝えるためには、英語を学習して、英語で向き合う必要があると感じています。
岡田:最後に、これから英語を学ぼうと思っている方へメッセージをお願いします。
松山氏:日本のビジネスパーソンは専門知識も深く非常にクリエイティブであると思います。その強みをグローバルで発揮するために、言語の壁をなくすことは本当に重要です。
また、英語は「学ぶこと」がゴールではなく、何かをするための「ツール」であることを意識して学んでいくと良いと思います。
私は興味のあることや最新情報の学習を翻訳されたものではなく、原書で行っています。プログリットで学んだシャドーイングを駆使しながら、英語で発信されたものを英語でインプットすると学習効率もより高くなると思います。
忙しくて時間がなかったり、投資するのも大変だと思いますが、工夫の仕方はいくらでもあります。まず一歩踏み出してみることが、一番大切だと思います。
全対談は、ぜひ下記動画でご視聴ください!
記事では書ききれなかった松山氏が語る英語学習やキャリアの選択などついては、ぜひ下記動画をご覧ください!