- なぜ「失礼な英語」が問題になるのか?
- ビジネスでありがちな「失礼な英語」表現10選
- ① I want the report by Monday.(報告書を月曜までに欲しいです)
- ② You must attend the meeting.(会議に必ず出席してください)
- ③ Why didn’t you finish the task?(なぜタスクを終えていないのですか?)
- ④ You are wrong.(あなたは間違っています)
- ⑤ I don’t like it.(それ、好きじゃないです)
- ⑥ I need you to finish this today.(今日中にこれを終えてもらう必要があります)
- ⑦ What do you mean?(どういう意味ですか?)
- ⑧ You should have told me earlier.(もっと早く教えてくれるべきでした)
- ⑨ Tell me the result.(結果を教えて)
- ⑩ That’s not my job.(それ、私の仕事じゃありません。)
- 丁寧で自然な言い換え表現
- 英語的な失礼さ」を防ぐための3つの習慣
- まとめ
なぜ「失礼な英語」が問題になるのか?
英語には日本語のような敬語表現はない――そう思っている方も多いかもしれません。
たしかに「尊敬語・謙譲語・丁寧語」のような体系だった敬語は存在しませんが、英語にも“相手との距離感”や“場にふさわしいトーン”を示す表現の使い分けがあります。
このニュアンスを誤ると、無意識のうちに失礼な印象を与えてしまうことがあるのです。
英語には「敬語」はない?→実はある“距離感”の表現
英語には「です・ます調」のような語尾の変化はありませんが、語彙の選び方や文の構造で丁寧さを表現する文化があります。
たとえば:
カジュアル | 丁寧・フォーマル |
---|---|
I want to know… | I would like to know… |
Tell me. | Could you please tell me? |
You’re wrong. | I’m afraid that’s not quite accurate. |
これらの表現は、意味としては同じでも、受け手の印象が大きく異なります。
つまり、言葉の選び方=相手への敬意の表し方なのです。
グローバルビジネスでは「無意識の失礼」が信頼を損なう
ビジネスシーンでは、英語が通じるかどうか以上に、「どう伝えるか」が評価される場面が多くあります。
たとえば、以下のようなやり取りがあったとします。
× That’s wrong.
→ 意図としては「間違っています」でも、命令口調・否定的な印象で強すぎる。
○ I think there might be a small mistake here.
→ 配慮を示しつつ、相手に自尊心を残す表現。
このような違いを意識しないまま英語を使ってしまうと、
「この人、なんだか失礼だな」
「ちょっと強すぎる、押し付けがましいな」
と思われ、仕事相手との信頼関係にヒビが入る可能性もあります。
特にTOEIC700以上の中上級者になると、文法や語彙はある程度使いこなせる一方で、“場に応じた丁寧さ”という感覚が置き去りにされがちです。
だからこそ、「失礼にならない英語」は、スピーキング・ライティングにおいて常に意識すべきポイントなのです。
ビジネスでありがちな「失礼な英語」表現10選
英語では、言葉の選び方ひとつで印象が大きく変わります。
このセクションでは、意味は正しくても“トーン”が悪く取られてしまう表現と、その背景・理由・場面別の丁寧な代替表現を具体的に解説します。
① I want the report by Monday.(報告書を月曜までに欲しいです)
“want”は直訳すると「〜が欲しい」で、話し手の強い欲求・指示をストレートに表します。
ビジネスシーンでは、「自分の都合を優先して相手に命令している」印象を与えかねません。
丁寧な言い換え
I would appreciate it if you could send the report by Monday.(もし月曜までに送っていただけたらありがたいです)
→ 丁寧さと配慮が加わり、相手への敬意が伝わります。
② You must attend the meeting.(会議に必ず出席してください)
“must”は法的・義務的な強制力を示すため、上下関係を強調しすぎた命令口調に聞こえます。
英語圏では協調性が重視されるため、高圧的と取られる可能性があります。
丁寧な言い換え
It would be great if you could join the meeting.(ご参加いただけるとありがたいです)
→ 柔らかい依頼でありながら、要望はしっかり伝わる表現です。
③ Why didn’t you finish the task?(なぜタスクを終えていないのですか?)
理由を聞いているようでいて、実際には非難・詰問のトーンに聞こえる典型的な表現です。
部下や同僚との関係性によっては、反発や萎縮を招くことも。
丁寧な言い換え
Was there any issue completing the task?(タスク完了に何か問題があったのでしょうか?)
→ 原因にフォーカスしつつ、責任を直接追及しない配慮ある言い回しです。
④ You are wrong.(あなたは間違っています)
あからさまな否定表現は、相手の立場・知識を否定してしまうリスクがあります。
内容よりも、「あなたが間違っている」という個人攻撃に聞こえる可能性が高いです。
丁寧な言い換え
I think there might be a small mistake.または I’m not sure that’s entirely accurate.
→「間違い」という事実に焦点を当てつつ、相手のメンツを保つ言い回しになります。
⑤ I don’t like it.(それ、好きじゃないです)
“I don’t like”は非常に個人的で感情的な言い回しで、建設的でない印象を与えます。否定的な意見を表す場合でも、代案や視点の違いとして表現した方がスマートです。
丁寧な言い換え
I have a slightly different perspective.(少し違う視点を持っています)
または We might want to consider other options.
→ 対話を前向きに続けられるトーンになります。
⑥ I need you to finish this today.(今日中にこれを終えてもらう必要があります)
“need you to…” は命令に近い表現で、相手の事情や余裕を考慮していない印象を与えがちです。
丁寧な言い換え
Would you be able to complete this by today?
→ 相手に選択肢を残しながら、実質的には同じ依頼ができます。
⑦ What do you mean?(どういう意味ですか?)
質問としては成立していますが、言い方によっては苛立ちや批判のニュアンスを帯びてしまいます。
聞き返すときは、相手を尊重しつつ確認する姿勢を見せるのが重要です。
丁寧な言い換え
Could you clarify that a bit more?または Just to make sure I understand, could you explain that again?
⑧ You should have told me earlier.(もっと早く教えてくれるべきでした)
過去の行動を責める“should have”は、責任を追及する口調に聞こえます。
丁寧な言い換え
Next time, it might help if we could discuss this earlier.
→ 改善提案として未来に焦点を当てると、責めではなく建設的な対話になります。
⑨ Tell me the result.(結果を教えて)
命令形の”tell me”は、ぶっきらぼうで冷たい印象になりやすく、特に文面(メールなど)では要注意です。
丁寧な言い換え
Could you please let me know the result?または I’d appreciate it if you could share the result with me.
⑩ That’s not my job.(それ、私の仕事じゃありません。)
事実であっても、「協力する姿勢がない」「責任を回避している」ように受け取られる可能性があります。
丁寧な言い換え
That’s not typically part of my role, but I can check who’s in charge.
→ 担当外であることを伝えつつ、協力的な態度を示すことで印象が良くなります。
このように、ほんの少し言い方を変えるだけで、相手に与える印象が大きく変わります。「英語が伝わるか」ではなく、「伝わり方まで配慮できているか」が、中上級者に求められる本質的な英語力です。
丁寧で自然な言い換え表現
前のセクションでご紹介したように、ビジネス英語では「言っている内容」だけでなく、「どう言うか(トーン)」が非常に重要です。
このセクションでは、特に使用頻度の高い3つのシーン――依頼・断り・指摘・反論――に焦点を当てて、「失礼にならない英語表現」とその言い換え例をご紹介します。
① 依頼するとき:お願いをソフトに伝える英語表現
ビジネスでの依頼は、「押しつけにならず、かつ明確に伝える」ことが大切です。
直接的すぎる | 丁寧で自然な表現 |
---|---|
Send it to me. | Could you send it to me, please? |
I want the document. | I would appreciate it if you could share the document. |
I need it today. | Would you be able to provide it by the end of today? |
ポイント:
- “Could you〜?” は依頼の定番。語尾に “please” をつけるとさらに柔らかく
- “Would you be able to〜?” は、相手の都合を尊重する言い方
- “I would appreciate it if…” は、丁寧+感謝を含む万能表現
② 断る・否定する時:配慮を示すNOの伝え方
英語では「No」をそのまま言うと、強すぎたり冷たく聞こえたりすることがあります。そこで、「共感+代替案」のセットで伝えると、相手も納得しやすくなります。
直接的すぎる | 丁寧な言い換え |
---|---|
I can’t do that. | I’m afraid that might be difficult at the moment. |
That’s not possible. | Unfortunately, that won’t be feasible this time. |
No. | I understand the request, but I may need to decline this time. |
ポイント:
- “I’m afraid…” は、否定を遠回しに伝える英語独特のクッション表現
- “Unfortunately…” はビジネスの場で相手の気持ちを配慮するNOの導入語
- 完全な否定の前に、背景や理解を示す一言を入れるだけで印象が大きく変わります
③ 指摘・反論するとき:攻撃せずに意見を伝える方法
相手の間違いや意見のズレを指摘する際は、相手の立場を尊重しながら「別の見方」や「補足」を提案する姿勢が求められます。
ストレートすぎる | ソフトな言い回し |
---|---|
That’s wrong. | I think there might be a small misunderstanding. |
You’re not right. | That’s an interesting point. May I offer another perspective? |
I disagree. | I see where you’re coming from, but I might see it a bit differently. |
ポイント:
- “I think there might be…” はあくまで“かもしれない”という姿勢で意見を述べられる
- “I see where you’re coming from” は相手の立場を一度受け止めてから反論するスマートな言い回し
- ビジネスでは「正しさ」よりも建設的なやり取りが評価される場面が多い
多くの日本人学習者が誤解しがちですが、英語の丁寧表現は“回りくどい”のではなく、“相手の感情に配慮するための工夫”です。英語圏のビジネスでは、明確さと同時に、敬意・共感・柔らかさが重要視されます。
英語的な失礼さ」を防ぐための3つの習慣
「正しい英語」を話しているつもりなのに、相手に冷たく聞こえたり、ぶっきらぼうだと思われてしまうことがあります。
これは英語の“表面上の正しさ”と“相手に与える印象”が一致しないことがあるためです。
では、失礼な印象を与えないためには何を意識すればよいのでしょうか?
ここでは、ビジネス英語における“英語的な配慮”を自然に身につけるための3つの習慣をご紹介します。
① 書いた英語は「トーン」で読み返すクセをつける
英語でメールやチャットを送るとき、
「内容が正しいか」だけでなく、「この言い方はどう受け取られるか?」という視点でトーンを読み返す習慣を持ちましょう。
Send me the file. → 「命令っぽいかも?」
Could you please send me the file? → 柔らかく依頼できている?
ポイント:
声に出して読んでみると、自分の英語がぶっきらぼうか、配慮があるかを客観的に判断しやすくなります。
可能であれば、ネイティブの同僚やツールを使って「この表現どう思う?」と尋ねてみるのも◎。
② ChatGPTに「この言い方、失礼じゃない?」と聞いてみる
ChatGPTは、英語の文法や意味だけでなく、「その言い回しが丁寧かどうか」「ビジネスシーンで自然かどうか」を判断してくれるツールとしても活用できます。
プロンプト例:
「以下のメール文は、英語ネイティブにとって失礼ではありませんか?より丁寧な表現があれば教えてください。」
→ ChatGPTは、具体的な言い換え+その理由+使い分けの解説まで提示してくれます。
ポイント:
自分だけでは気づけない表現のトーンや、文化的な距離感のズレも、AIを使えば客観視しやすくなります。
③ アプリで学習する

文面では丁寧に書けても、いざ話すとなるとついカジュアルすぎたり、言い方が単調で印象が硬くなってしまう…という悩みは多いものです。そこで活用したいのが、実際に声に出して練習できるAIスピーキングアプリ「スピフル」です。
スピフルの特徴:
- 1分スピーチの音声をAIが自動添削
- 不自然なトーンや表現を修正+「なぜそれが適切なのか」まで教えてくれる
- ビジネス英語4,000例文で、丁寧な依頼や断りなども練習可能
スピーキングは「知っている」だけでは不十分。声に出して初めて“配慮ある伝え方”が自分のものになります。
スピフルについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。

まとめ
ビジネス英語において求められるのは、単に「通じる英語」ではありません。
相手の立場や文化に配慮した、「信頼される伝え方」ができてこそ、本当の意味での英語力です。
英語には「丁寧さ」を表す工夫がたくさんあります。Would you mind〜?、I’m afraid〜、I’d appreciate it if〜 といった表現を身につけることで、あなたの英語は“正しさを気にする段階”から“伝わり方を気にする段階”へと進化していきます。ただし、こうした表現は「知っている」だけでは実践で使えません。
口から自然に出せるようになるまで、話す・間違える・直すというプロセスが不可欠です。伝わり方まで気を配ることにこだわり、信頼される話し方をできるようになりましょう。