PROGRIT創業者インタビュー

-もう「英会話スクール」はいらない-

岡田祥吾(おかだ・しょうご)
岡田祥吾(おかだ・しょうご)

グローバル時代のビジネスパーソンにとって、英語は活躍の場を世界に広げるコミュニケーションツールだ。だからこそ巷にはビジネス英会話スクールがあふれているわけだが、そこに通う人たちの何割が、実際に英語を使えるようになっているだろうか。
「週に1度のレッスンに通ったところで、英語は身につかない」。こう語るのは、英語学習コンサルティングPROGRITを運営する株式会社GRIT代表の岡田祥吾氏。英語を教えるのではなく、“ビジネスパーソンの英語学習をコンサルティングする”という同社の理念とサービスについて、話を聞いた。

英語学習の9割は「自習」で足りる

-そもそも、なぜ従来の英会話スクールでは英語が身につかないのでしょうか。

英会話のレッスンというのは、スポーツでいう練習試合みたいなもの。たとえば野球がうまくなりたい人は、コツコツと練習を積み重ねたうえで試合に臨みますよね。

英語も同じで、まず日々のトレーニングを行わなければ、上達はありえない。にもかかわらず、そこがすっぽりと抜け落ちた状態で、ひたすら練習試合、つまり講師との英会話だけを繰り返す方が大半です。

もちろん、レッスン以外の時間に自習ができていればいいのですが、多くの英会話スクールでは週に1度、時間を決めてレッスンを受けるので、それ以外の時間に何をするかはお客様に任されています。

そうすると、ほとんどの方は他力本願になり、「週1のレッスンを続けていれば英語がうまくなるはず」と、まるで奇跡のようなことを願ってスクールに通うようになります。

当然、それでは勉強量が足りないので、英語は身につきませんよね。逆にいえば、英語力の8~9割は自習によって習得されるものだと思います。

-自習、つまり独学で習得できるということですか?

はい。世の中にはリスニングから文法まで、すでに山ほど英語教材が出回っています。ネットでちょっと検索すれば、スピーキングを上げたかったらこれ、リスニングはこれと、どれだけメソッドがあるんだと驚くくらい出てきますよ。

ただ、そうなると結局何が正しいのかわからなくなって、試してみたけれど効果が出ないから次のメソッドに移る、という悪循環に陥りやすい。

自分にどんな力が欠けていて、それを補うためには何が必要なのか。確信がないまま勉強しても継続できないし、結果も出ません。何を自習するかが重要であり、間違った方向に努力しても意味がないんです。

私は、その部分にこそ、コンサルティングの必要があると考えています。

リスニングが苦手だから英語を聞くのは非科学的?

-PROGRITでは、どのように自習の内容を決めるのでしょうか。

最初に面談と当社独自のテストで利用者の目標と課題を洗い出し、市販されている書籍や音源、オンライン英会話レッスンや海外メディアの記事など、既存の教材を組み合わせて2カ月間の学習カリキュラムを組みます。

そのため、提案する教材や勉強法は人によってまったく異なります。リスニングが苦手な人もいれば、スピーキングを伸ばしたほうがいい人もいます。

さらに、今では第二言語習得論や応用言語学など、言葉の構造や脳が言葉を覚えるメカニズムの研究がかなり進んでいますから、そういった科学的な根拠に基づいて分析することで、その人にとってもっとも効率的な学習が見えてきます。

-たしかに、科学的な研究に基づいた努力をしている人は少ないでしょうね。

一般的に間違えやすい例を挙げると、リスニングが苦手だから通勤電車のなかで英語を聞くという人がいますよね。でもそれは安直で、できない理由をもうひとつ掘り下げたほうがいいんです。

リスニングは、脳のプロセスのなかで大きくふたつに分かれています。

ひとつが、英語を聞いたときに、その音がどの単語かを認識する「音声知覚」。もうひとつは、その単語が何を意味するかを理解する「意味理解」。この両方が成り立つときに、初めてリスニングができるようになります。

ところが、よくあるのは音声知覚に脳を使いすぎていて、ほとんど意味理解に回せていないというパターン。単語の音は聞き覚えがあるけれど、意味はわからないという状態です。

そういうときは、音声知覚に割いている脳のキャパシティをいかに減らすかが最重要課題になります。日本語の場合を考えると、音声知覚に頭を使う割合なんてほとんどありません。

日常会話では、相手が「あ」と発音しているか、「い」と発音しているかなんて考えることなく、言葉の意味にフォーカスしていますよね。その状態に近づけるために、たとえばシャドーイングという音声知覚を自動化するためのトレーニングを行います。

-同じリスニングでも、正しいトレーニングをしないと効果は薄いんですね。

そのとおりです。さらに、リスニングのプロセスをもっと細かく見ると、耳から入ってきた音声信号をもとに脳の知識データベースにアクセスして、正しい音のデータを取ってきています。

そういう一連の流れがあって初めて音声知覚ができるので、そもそもデータベースがない方は、いくらシャドーイングをやってもリスニングはできません。その場合は単語の音や意味、文法などの知識をインプットすることから始めないといけないんです。

自習の継続に必要なのは、教師ではなく「伴走者」

-言語習得のメカニズムやメソッドのほかに、PROGRITならではの強みを教えてください。

科学的な根拠を示せるメソッドを総合的に考えて、なぜそのトレーニングが必要なのかを論理的に説明できることしかやらない。その提案が、PROGRITの価値のうち20~30%を占めていると思います。

残りは、2カ月間の集中的なトレーニングに割く時間を管理し、マンツーマンでコミュニケーションを取りながら伴走することです。

私自身が新卒でマッキンゼーに入社した頃、週1の英会話レッスンでまったく成果が出ず、自習を中心とした勉強スタイルに切り替えた経験があります。そのときにまずぶつかったのは、「仕事が忙しすぎる」という壁でした。

結局、やれば結果が出るとわかっていても、忙しいビジネスパーソンが1日3時間の勉強時間を捻出し、継続することがいちばん困難なんです。

コンサルティングの中でよく行うのは、睡眠と食事を除いたオン/オフの時間をすべて書き出していただいて、そこから無駄をなくし、効率化できる部分は効率化すること。毎日の生活スケジュールの見直しです。

1日3時間を捻出するハードルは高いですが、それくらいの時間を勉強に割かなければ、英語は習得できません。

そのためには2カ月という期間も重要で、それより短ければ結果が出ないし、長いと途中でダレたりサボったりしてしまう。2カ月、8週間だけなら、頑張れば誰でも集中して打ち込めます。

「その飲み会は本当に必要ですか?」

「この会議はあなたが出なければ成立しませんか?」

そうやって聞いていくと、必要のない予定が結構出てくるものです。無駄を削って空いた時間に勉強の予定を組み込むので、皆さんそれほどキツいとは感じられず、「かえって毎日の時間に余裕ができた」とおっしゃる方も多いですよ。

-英語だけでなく、仕事や日々の生活も含めたコンサルティングなんですね。

そのために、チャットツールを使った毎日の進捗確認と、週に1度の面談を行っています。

いつ、どこで、何を、どれだけやるのかという週間スケジュールを分刻みで共有し、「これからシャドーイングを始めます」「シャドーイングを終わります」「これから電車に乗るので単語を始めます」「終わりました」

……こういう日々の進捗をリアルタイムで確認して、予定どおりにいかなければその理由を話し合い、完璧にできていたら「もっと頑張れますね」とハードルを上げます。

完璧にできているということは、まだ伸びしろがあるということですから。

-なるほど。専属のコーチのようでもあり、秘書のようでもあり。それがコンサルタントの役割である、と。

もうひとつ、コンサルタントがつくことのメリットとしては、その人がどれくらい成長しているのかを客観的に見られることも大きいです。

英語に限った話ではありませんが、自分自身の成長って、なかなか実感できませんよね。でも、他人から見ると1週間の成長が如実にわかったりするので、それをSPM(Sentence Per Minute、スピーキングの速さを測る指標)やWPM(Word Per Minute、リーディングの速さを測る指標)といった指標で定量化し、見える化して伝える。

これがあるのとないのとでは、勉強のモチベーションが大きく変わります。

当社のコンサルタントは皆、様々な業界で実践的なビジネス英語を学習し、使ってきた英語のプロフェッショナルです。発音やヒアリングなど、英語自体についてのチェックやアドバイスも行いますが、教師ではありません。

重要なのは英語を教えることではなく、パートナーとして、2カ月間の特訓に伴走すること。目先のゴールは英語力を上げることですが、毎日3時間を勉強に充てられるようになれば、MBAの資格を取ったり、趣味を充実させたり、何だってできるようになります。

忙しいから自分には無理だと諦めず、挫けずにやり抜いた成功体験を得ることで、可能性を広げてほしい。その一歩を踏み出すための、PROGRITでありたいと思います。

NewsPicks Brand Design制作
(編集・文:宇野浩志 撮影:後藤渉)
-NewsPicksインタビュー記事より転載-

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